何が起こっているの??

先日の話です。TENOHASIの活動日ではないのですがたまたまいつもの公園に立寄ったところたくさんの方にあの人どうにかしてほしいという話があり、どんな様子か伺うと、その方(Aさん50代男性)は、南公園の片隅に座り込み、体を震わせていらっしゃいました。薄いジャージと下にシャツ一枚着ている程度で、全身冷え切っている様子でした。手足はむくみ、パンパンで、氷のように冷たかったです。

何を聞いてもご本人がほとんど頷く程度の返事をされるため、状況がよくわからなかったのですが、公園の住人の方のお話によると、この方は3日くらいここに座り込んだままで、雨が降ってもそのまま座ったままだった、ということでした。誰かがその日配っていたおにぎりを差し上げたようですが、少しだけ食べたようでした。

話ができなかったのは、ずっと食べていない、休息がとれていない、身体が冷え切っている、という衰弱しきった状況からだったのでしょうか。

ちょっとずつお答えいただいた範囲でわかったことは、お名前と年齢、そして状態として、動けないということ、頭が痛いということ、気持ちが悪い、ということ、2週間何も食べていなかったということ、でした。
救急車を呼んだほうがいいですか、と伺ったら、頷かれたため、救急車を呼びました。

ぶるぶると全身震わせ、表情もこわばり、どんな質問もうなずいたり、ときどき少しの単語を口にされるだけで的を得ず、救急隊も苦戦していましたが、I病院に運ばれることとなりました。

救急隊の方の何人かは、質問に答えられないことにため息をついたりどうして返事しないのー?と笑ったりしながら「状況がわからないのに救急車を呼ばれても困る」と言ったり、「ただおなかがすいているだけではないか。 それくらいで救急車を呼ばれても困る」と言ったりしていました。「2週間食べていない」という話には「そんなことあるはずがない。」とあざ笑って否定していました。

病院に着いたら、体温を測ろうとしましたが、体が冷たく、体温を測ることができませんでした。
今回は診察室には入れてもらえなかったので、どんな対応をされたのかわからなかったのですが、状況がよくわからないから、と「頭が痛いと言っているらしいので」「とりあえず」痛み止めと胃薬を出されて、帰されてしまいました。
耳から採血をしていました。(これも大いなる疑問点のようです)
救急隊の方に後はよろしく、と言われてしまい、全身震わせていて、まともに歩けないAさんの肩を支えてとりあえず病院を後にしましたが、もうすっかりあたりは暗くなっていて、気温も下がってしまっていましたし、土曜日の晩でしたので、区役所があくまでにまだ2日ありましたので、どうしたらよいのかわからず、途方にくれてしまい、悔しさと戸惑いから涙が止まらなくなってしましました。
見ると、Aさんの目からも涙が流れていました。
泣いている場合ではないな、とわれに返り、とりあえず暖をとろうと思い、ゆっくりいることができそうな喫茶店に向かいました。
その途中であったかい缶ジュースを飲んでいただき、喫茶店に入り、暖かい紅茶とサンドイッチをAさんに食べていただいたり、氷のように冷たくなった手をマッサージしたりしていました。手はだいぶぬるくなりました。
そうして暖まってもらっているうちに、TENOHASIスタッフや他団体の方に電話させていただき相談させていただきました。
IMAシェルターを利用させてもらい、月曜日に福祉を通して病院の外来にかかることが一番よいかなと思っていたのですが、IMAに連絡がとれませんでした。
いまさん(仲間の支援者)が駆けつけてくださって、ご本人とも相談した結果、近くのカプセルホテルにとまっていただいくことがいい、ということになりました。
宿泊費は、IMA緊急シェルターの「IMA基金」を使わせていただこうと思いました(こちらは事後報告でよいという了承をいただいています。)
そしてこのとき、suiさんが喫茶店まであたたかい服を届けてくれました。

いまさんと二人でAさんのお体を支えながら近くのカプセルホテルまで向かいましたが、近くまで来たときにはAさんの体の震えは強くなり、呼吸も荒くなり、涙をぽろぽろ流されて足取りもよりふらふらしてしまっていたため、やっぱり救急車をまた呼んだほうがいいね、ということになりました。

こちらの救急車にはいまさんが付き添ってくださり、わたしは帰らせていただいたのですが、聞いた限りでは、親切に対応してくださったようです。

体温が低いことを救急隊の方も、受け入れ先となったY病院のお医者さん、看護師さんも「危ない状態だった」と言っていたそうです。
あれだけ暖まってもらったのにY病院に着いた時点で体温が32℃しかなかったそうです。入院となり、暖まって落ち着いたら検査をしましょう、ということになりました。

驚いたのは、お体を支えて歩いていたとき、Aさんの肩やわきの下、胸などに触れたときに、薄いジャージの下の肌の体温がひんやり冷たいのがわかったことです。どんなに気温が低く、指先が氷のように冷たくなっても、肩や胸の辺
りまで冷たくなってしまうことは初めてで、その冷たさを感じたときになんとなくぞっとしました。

悔しいともつらいとも口にすることができずにぽろぽろと涙をこぼしていたAさんのお気持ちは計り知れない、と思いました。
あんなに薄着で、小さい手提げしか持っていないAさんはいったいどんな背景の方だったのでしょうか。。

そして、入院して、約1週間・・ひたすら眠り続けていたAさんは、お亡くなりになりました。
無念でなりません。こころから、ご冥福をお祈りします。

病院には病院の事情があり、救急隊には救急隊の事情はあるでしょう。
事実、病院から帰されてしまう衰弱した「ホームレス」状態の方に対し何もできないというこころの葛藤を救急隊の方に打ち明けられたこともあります。

Aさんの死を静かに見守りたい気持ちが山々なのですが、あえてこんな書き込みをしたのは、誰かを糾弾することが目的なのではなく、どうしたら、こんなことが起こらずにすむのか、問題提起をしたいと思ったからです。

どうか、今後このようなことが起こらないことを強く望みます。

(az)

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