私たちが活動している池袋周辺にも、生活に困窮して家を失った方が多くいらっしゃいます。
失業・家族と絶縁・病気や障がいなど、原因は様々ですが、共通しているのは孤立無援であることです。
どの方も、安心できる家族や仲間とのつながりを失い、不安に押しつぶされそうになりながら、孤独に耐えてかろうじて生きています。
私たちは、その方々と出会い、話し、一緒に考え、試行錯誤しながら、 安心できるつながりとホームを取り戻すお手伝いをしています。
TENOHASIが目指す社会
困っている人がいれば、誰かが手を差しのべる。そんな地域社会をめざして
長引く不況下に、日本で暮らす人々の間の格差はますます広がりつつあります。
病気やリストラなど何かのきっかけで仕事や住まいをなくしてしまうことは、もはや誰にとっても対岸の火事とは言えない状況です。
現在、ホームレス状態にある人の数は、3992人とされています(厚労省調査・2020年)が、実際にはその数倍に上ると考えられます。その人たちを「自分とは違う世界の人たち」と、見て見ぬふりをするのは簡単です。
でももし、あなた自身が、あなたの兄弟や親せきがそうなったとき、見て見ぬふりをされてしまったら…。
飽食の時代に、満足に食べるものもなく安心して眠る場所もない人がいる、それは、私たちが生きているこの社会の現実です。
私たちTENOHASIは、池袋を拠点に、孤立してホームレス状態にある人々がつながりを取り戻し、安心して生きていけるようにサポートすることを使命としています。
同時に、この現実を広く世間に知らしめることによって差別偏見をなくし、孤立している人や生活に困っている人々がいたら、だれかが自然に手を差しのべるような地域社会をつくることを目指しています。
TENOHASIの思い
「すべての人に居場所を」これが、私たちの思いでした。
TENOHASIが発足した2003年は、日本の自死者数が急激に高まり、それが続き始めた時期。私たちの国は、生きづらさと閉塞感を増していました。人生には何かアクシデントがあるのが当たり前で、今まではそれを助け合ってきたはずです。しかし、社会にゆとりがなくなってからは、何かあった人は排除されるように変わっていったように思います。その排除された人々の、行き着いた先のひとつが、「野宿」という場所だったのです。
私たちは、野宿する人々に、いくつかの調査をさせていただきました。その中で何度か、「ホームレス状態から脱したいですか?」と質問しました。非常にそう思うから、まったくそう思わないまでの5段階評価です。ほとんど全員が、「非常にそう思う」と回答しました。寒い夜に歩き続け、雨の日は震え、食事も十分になく、ゆっくり眠る場所もないのですから。
それなのに、ここではこんな言葉も聞くのです。
「国が、借金じゃ言うて、難儀しちょる言うから、生活保護も受けんと、野宿しちょるんよ」(70歳代女性)
「息子が、会社社長だから、生活保護は受けられないんだ」(70歳代男性)
「ぜんぶ、私が悪いのです」(暴力から逃げてきた女性)
2012年の厚生労働省の実態調査では、調査対象者の半数以上が60歳以上でした。私たち一人一人は、この結果から何かを学ばなければなりません。人々の心が、どこへ向かうのかが問われていると思います。
今、私たちは多くの仲間とともに、「すべての人に安心できる居場所を」という思いで、人が生きる場所を作っています。今後も、皆さまとともに、どうしていったらいいのかと考え続けていければ幸いです。